教育

歴史学・考古学分野

 

日本史学領域

日本史学領域では、古文書や典籍といった文字史料の読解方法を修得して、日本という地域の歴史を研究します。岡山大学文学部には、古代・中世・近世・近現代の全時代をカバーする教員が揃っています。授業によっては附属図書館所蔵の実際の古文書を使用したり、自治体とも協力した古文書調査を実施しており、まさに歴史研究の現場で学ぶことができます。

日本史研究室:https://www.okayama-u.ac.jp/user/bizen/index.htm

日本史学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

実践演習(日本史)では、附属図書館が所蔵する岡山藩の文書をテキストに用いたくずし字解読のほか、時代ごとに史料や文献を精読します。また、フィールドワークや地域の古文書調査も行います。

課題演習(日本史)では、卒業論文のテーマの選定や執筆に向けて先行研究の成果や課題を踏まえて、史料を解釈した研究発表を行い、参加者で質疑応答していきます。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 弘仁12年(821)に行われた讃岐国満濃池修築のための労働力編成に関する研究
  • 『古今著聞集』の「鬼同丸」退治をめぐる説話と武士団の由緒に関する研究
  • 中世の伊勢神宮における「怪異」現象の発生と修復工事の関係に関する研究
  • 備中国を事例とした近世後期の農村における同族集団についての研究
  • 姫路藩内の「社倉法」「固寧倉」を事例とした近世後期の救済機能に関する研究
  • 岡山県を事例とした昭和戦時期の国民学校教育に関する研究

東洋史学領域

東洋史学領域では、アジア諸地域の歴史を、政治・社会・宗教・文化・経済・国際関係などの多様な視点から研究します。授業では漢語や英語などで書かれた文字史料を読み込んでいきますが、教室から飛び出して自らアジアに出かけることも奨励しており、実際に多くの学生が留学・調査旅行を経験しています。大学院には、中国や東南アジアからの留学生が在籍し、かれらと身近に接することができるのも、東洋史の魅力です。

東洋史研究室:https://sites.google.com/view/okadai-toyoshi/

東洋史学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

実践演習(アジア史)では、歴史研究の基礎となる史料の読解能力を身につけるため、漢文や英語文献を精密に読み進めます。学生は研究室の参考書等を使って予習することが必須となります。

課題演習(アジア史)では、卒論執筆に向けて各自の選んだテーマに関する先行研究への理解を深め、対象とする時代に記された史料を解読し、独自の「研究」に取り組みます。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 唐代の皇帝生母に対する「皇太后」称号の追尊と、その政治的・思想的背景についての研究
  • モンゴル・元朝時代における首都北京の建設、およびその管理に携わった官僚機構についての研究
  • 近代上海における女性の社会的地位の変化とファッションの関係についての研究
  • 朝鮮王朝後宮に生きた女性の自伝的回顧録の成立と伝播についての研究
  • 20世紀初頭ハワイにおけるフィリピン人移民労働者の権利拡大要求運動と、その指導者についての研究
  • ブワイフ朝(932-1062)時代の知識人の往復書簡にみる、イスラーム教徒と異教徒の知的交流についての研究

西洋史学領域

西洋史学領域では、ヨーロッパ・アメリカ諸地域の歴史を、政治・社会・宗教・文化といった視角から研究します。歴史学は、断片的に伝わる文献・モノを通して、過去の人間の営みを再構成する学問です。西洋諸語の文献史料を読み解きながら、そこに直接表れてこないミッシング・リンクを見つけ、西洋がどんな歴史をたどったのか、西洋が世界の歴史にどんな影響を与えたのか、解明していきます。

西洋史研究室:https://sites.google.com/s.okayama-u.ac.jp/okadaiseiyoshi/

西洋史学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

実践演習(西洋史)では、歴史・歴史学とは何か?に関する専門家の論文(日本語)を読んで歴史研究の方法を身につけ、英語、ドイツ語、フランス語などで書かれた史料や研究論文を対象として歴史文献の読み方を学びます。


人文学概説(西洋史)では、ヨーロッパが形成された歴史の大きな流れについて中世や近現代それぞれの特殊性を加味しながら講義形式で説明し、教員と学生の討論により理解を深めます。映像資料を用いることもあります。

人文学講義(西洋史)では、中世および近現代を専門とする教員がそれぞれ自分の専門分野の最新の知見を紹介しながら、ビザンツ中世における文化の融合と変容や、近代ロシアの「大改革」などについて説明し、学問の世界に誘います。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 中世イタリア都市国家への免税特権下賜が、ビザンツ(東ローマ)帝国の国家財政にどのような影響を与えたのかを明らかにする研究
  • 中世後期キリスト教文学が、どのような教化意図のもと、どのようなレトリックを用いて書かれていたのかを分析する研究
  • 14世紀後半のイングランドにおける都市と大学の争いに、王権がどのように介入したのかを明らかにする研究
  • ロンドンで主要ターミナル駅が行き先ごとに分散して作られた理由を、19世紀イギリスの時代背景から明らかにする研究
  • ナチス・ドイツでユダヤ人絶滅政策がいつ、どのように決定されたのか、ヒトラーの命令によるのか否かに関する研究
  • 第二次大戦期のほぼ大半をドイツに占領されナチスの協力もしたフランスが、国連安全保障理事会常任理事国になれた理由を明らかにする研究

考古学領域

考古学は、遺跡の発掘や出土品の分析を通して、過去の社会・文化を明らかにする学問です。岡山大学文学部では、主に日本列島の遺跡や遺物を対象として、発掘からコンピュータ解析まで、調査研究のための知識と技術を身につけます。海外との比較研究も積極的におこなっています。休みの時期に実施する泊まり込みの調査では、縄文時代から古墳時代の遺跡を発掘することができます。

考古学研究室:https://www.okayama-u.ac.jp/user/arch/index.html

考古学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

考古遺物を丁寧に記録する専門スキルを実測と言います。実践演習(考古学/実測)では、実際の考古遺物を使ってさまざまなタイプの考古遺物を実測する技術を身につけます。

人文学概説(考古学)では、主に日本列島の考古学を対象に、縄文時代から古墳時代の終わり頃まで、基礎の基礎から研究者だけが知っている最新の知見まで網羅的に学びます。

実践演習(考古学/外書購読)では、考古学で世界の国々(ギリシア、エジプト、メソポタミア、古代ローマ、インダス、古代マヤ)とシンクロします。さまざまなトピックを、リアルな考古学の視点で学び直します。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 兵庫県たつの市権現山51号墳出土の特殊器台型埴輪の製作集団についての研究
  • 人骨の歯石を分析して、当時の人々の食文化を探る研究
  • 宮崎県の地下式横穴墓出土の鉄鏃(鉄のやじり)からみる男女差の研究
  • 段ノ塚穴型石室の構造と構築を検討し、当時の社会の変遷を探る研究

在学生のことば

西川 篤史(2021年度入学・日本史学領域)

私が日本史領域を選んだ理由は、考古学関係の職についている父の影響などにより、小さいころから歴史に興味があったからです。今後卒論に向けて研究を進めていくうえで、モチベーションは非常に大切になってくる部分だと思うので、やはり自分の好きな分野や関心のある領域を選択することが大切です。そのためにも、1回生のうちに多くの分野に触れて見聞を広めておくことが重要だと思います。
日本史では、資料ではなく史料という字をよく用います。文字通り歴史文献に当たる機会が多いので、必然的に過去に書かれた古文書類に触れる機会も出てきます。古文書は現代の楷書とは違い、草書のように崩された文字で書かれていることが多いため、日本史領域ではくずし字を読むトレーニングをしています。初めのうちは、年月日を読むことすら苦労しますが、頻出単語や定型文句を覚えられるようになると、くずし字を読めることが楽しいと感じることもあるため、くずし字の形を覚える大変さと共に達成感も感じられます。
史料からは、その人物が何に触れ、何を学び、どう行動に移したのかが浮かび上がってきます。そうした史料の突き合わせによって事実や人物像が鮮明になっていく、そこに歴史を学ぶロマンがあるのではないでしょうか。

川月 青(2022年度入学・考古学領域)

私が考古学を学びたいと思うようになったきっかけは小学生の時にスリランカの世界遺産シギリヤロックに登ったことです。現代のような重機や科学技術もない時代にどのような方法で巨岩の上に宮殿を築いたのかという疑問を持ち、そこから古代の人々の営みを研究することにとても興味を持ちました。
考古学の一番の魅力は発掘現場での活動だと思います。屋外での長時間の作業は大変な事もありますが、同じ目標を持った仲間と汗を流し、発掘する時間はたくさんの発見と成長をもたらしてくれます。また考古学はモノを通して過去の営みを知ることができる学問です。何も語ることのないモノをじっくりと観察し正しい解釈をする能力は玉石混淆の情報が溢れる現代を生きる私たちにとって大切な能力になると思います。
遺跡や遺物を見ると先人たちの超人的な技術に驚かされる事が多々ありますが、考古学を学んでいると実は先人たちも人間臭く、愚直に、情熱的に、諦めることなくさまざまな試練に挑戦していたことが分かります。受験勉強はなかなか思うような結果が出ず不安になる時もあると思いますが、何事も諦める事なく小さな努力を積み重ねる事が大切だと私は思っています。頑張ってください、応援しています。

教員のことば

土口 史記(東洋史学領域)

東洋史学領域では、「東洋」や「アジア」と呼ばれる地域の歴史を扱います。東は朝鮮半島や中国大陸から中央ユーラシア、東南~南アジアを跨ぎ、西はイラン高原を越えてアナトリア半島やシリア、エジプト、北アフリカまで、この広大な地域のダイナミックで多様性に富んだ歴史を深く学べるということが、東洋史学の面白さです。

東洋史学所属の学生は、自身の関心に基づきながら、それぞれに時代・地域・テーマを選んで歴史研究を行います。最初からテーマがはっきりと決まっていなくても心配ありません。まずは大まかな興味(たとえば始皇帝の統一政策や、三国志の時代の戦乱と社会、大航海時代の香辛料貿易、東南アジアの仏教建築などなど…)があればそれで大丈夫です。それを「研究」にしていくための方法は、授業や先輩たちとの交流を通じて学ぶことができます。

歴史研究で大事なことは、自ら史料をひもとき、より確かな過去を探りあてることです。史料との対話はそう簡単ではありませんが、そこに歴史研究の楽しさが詰まっています。東洋史学研究室には基本的な史料をはじめ、研究のために必要な参考書が揃っていますので、自分の研究はもちろん、自主的な勉強会や学生間のコミュニケーションのためにも活用できます。私たち教員も、みなさんの関心に沿った研究のサポートをしつつ、史料を読む楽しさを伝え、共有したいと思っています。

仲田 公輔(西洋史学領域)

歴史学・考古学分野、西洋史学領域の仲田公輔と申します。西洋史という言葉が耳慣れない方もいるかもしれませんが、世界史のうち、ヨーロッパやアメリカを中心的に扱う領域です。私はその中でも特に、7–10世紀頃のビザンツ(東ローマ)帝国というところを研究しています。これもまた、聞いたことすらない方もいるかもしれませんが、簡単に言うとコンスタンティノープル(現イスタンブル)に首都を置いたローマ帝国の東半分のことで、様々な社会・文化変容を経つつも実は15世紀まで存続していました。 
歴史といえば暗記科目というイメージが強い方も多いかもしれませんが、大学での歴史学では、残された史資料を手がかりに、過去についての新たな知見を目指していきます。私の場合は、ギリシア語やアルメニア語の文献を読み解きながら研究しています。皆さんも卒業論文では、興味を持ったテーマで、新たな過去の姿を明らかにできるかもしれません。
ところで、なぜ私達は過去という現代の我々から縁遠い存在を研究するのでしょうか?それは、歴史学にはあえて「今」「ここ」「我々」等以外に目を向けることで、私達自身の「あたりまえ」を問い直す意義があるからです。異なる視座から自分たちの時代の社会や文化を見つめ直し、多様な価値観への理解を深める契機にしていただければ嬉しいです。