教育

地理学・社会学・文化人類学・社会文化学分野

地理学領域

地理学の基本は「見て、歩いて、そして考える」ことに集約されます。人間の行動が地域・場所とどう関係しているのか、が地理学の中心課題です。授業では、近隣地域を対象にしたフィールドワークに出かけ、「見て、歩いて、そして考える」ことを実践します。なかでも産業地域や都市の変動、農山漁村の現状、地域の文化景観の変容など、現代の地域をめぐる特徴や地域差を考える研究、地域的な課題の解決に迫る研究を重視しています。

地理学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

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人文学概説(人文地理学)では、都市地理学、工業地理学、行動地理学などの成果をふまえつつ、人間活動の場である地域の捉え方について人文地理学の立場から講義します。

実践演習(地理学野外実験)では、近隣の一地域を対象にグループでの地域調査を行い、報告書を刊行します。実地での経験を通じ、地理学的な調査・研究手法を習得します。



実践演習(地理学)では、個人の研究発表を行います。教員と学生とが一体となって討論し、研究をより良い方向へと導きます。コンピュータによる地図作成の授業もあります。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 職人のネットワークからみた刀剣産地としての岡山県の優位性
  • 兵庫県東播磨地域におけるため池の改廃状況ならびに跡地利用・利用管理の実態
  • 北アルプスの南部地域を訪れる登山者たちがとる空間的行動の特徴
  • フランスのガイドブックからみた観光地としての東京に対するイメージの変遷
  • 福岡県糸島市における海岸林に対する保全活動の展開
  • 香川県丸亀市・うちわ産地を事例とした地場産業産地の変容に関する研究

社会学領域

一言でいえば、社会学は社会に生きる人々の関係性や、社会の成り立ち・しくみを明らかにする学問です。その入口は、国際結婚や子育て、まちづくり活動、教育問題や逸脱問題、同性カップル、アニメやファッションなど、実に多様です。個人的な悩みや課題も、実は社会とつながっていること。それを、インタビューやフィールドワーク、質問紙調査などを通して明らかにし、私たちの生きる社会を理解していくのが、社会学なのです。

社会学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

実践演習(社会学)では、大学の外の地域社会にでていって、社会調査の実査を行ないます。調査の企画、実施、まとめ、執筆を経て、報告書を刊行します。

実践演習(社会調査)では、質問紙調査や統計データを用いて、社会のリアリティに計量データで迫るスキルを学びます。コンピュータによる解析ソフトを用いたデータ分析も行います。

社会学領域の課題演習は卒業論文の完成に向けたゼミです。毎回、報告者の研究テーマについて、多様な角度から白熱した議論を交わしています。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • プロ野球選手のセカンドキャリア支援は、だれが、どのように、なぜ行っているのか
  • 幼少期からひとり親世帯で育った子どもは、自分のルーツについてどのように考えているのか
  • 低所得者層への教育支援がうまくいっている自治体と、そうでない自治体の違いは何か
  • eスポーツに関心を有する高齢者は、eスポーツの何に興味を惹かれているのか
  • ペットの犬を家族と考える人たちの家族観とはいかなるものか

文化人類学領域

文化人類学では、地球上の様々な人々の文化・社会を比較し、研究します。私たちがテレビや旅行などを通じて接する「異文化」は、ときに奇妙で不可解に見えます。挨拶から仕事の仕方、結婚のルールや子供の育て方まで、たくさんの違いがありそうです。でも、それらが「奇妙」なのは、私たちが自分の「当たり前」にこだわっているからかもしれません。他者の視点に立って「当たり前」を問い直すと、人間の多様性が見えてきます。

文化人類学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

人文学概説(文化人類学)では、世界各地の映像資料なども活用しつつ、文化人類学の主要なトピックを皆さんの日常的な経験と絡めながら多角的に伝えます。

実践演習(フィールドワーク)では、文化人類学の主要な方法であるフィールドワークについて、関連する本や映像を通じて学びます。毎年異なるテーマでミニ調査も行います。

実践演習(文化人類学)では、特定の地域やテーマ(岡山県矢掛町、古本屋、ライブハウス、ファッションなど)に沿ったグループ調査を実践し、報告書作成まで行います。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 平家踊りを事例に、文化財未指定の民俗芸能を受け継ぐ意味を知る
  • 表町商店街の楽器店でのフィールドワークから、売買の場における<文化>と<機能>とモノの価値について考える
  • コミュニケーションという観点から化粧を見る
  • 岡山県の伝統織物<烏城紬>継承活動を通して、現代日本における女性の<手仕事>を問う
  • 岡山の在日ムスリムの宗教実践を通じて、日本社会でムスリムとして生きることについて考える
  • 古楼村に住むある夫婦のライフヒストリー調査から、台湾原住民の置かれた状況を歴史と共に考察する

社会文化学領域

社会文化学では、CM・漫画・映画・SNSなど身近な素材の中の、他民族・自民族・ジェンダーのイメージ構築を分析します。戦争・植民地化がもたらした国際関係や歴史の諸問題、特に戦争体験・記憶・トラウマの世代間継承を扱い、過去の敵同士が相互理解に至る可能性を考察します。「オーラル・ヒストリー」(聴き取り)の方法論を学び、文書に残りづらい人々の感情や経験が、メディアで表象される仕組みを研究しています。

社会文化学領域にはどんな授業があるの?

※授業の内容は一例です。今後変更される可能性もあります。

人文学概説(社会文化学)では、身近なテレビ番組、Youtube、CM、 広告、SNS、新聞などのメディアを、人種(レイス)・クラス(階級)・ジェンダーの観点から分析する力を養います。海外からみた日本イメージ(戦争の影響やクールジャパン)も扱います。

人文学講義(社会文化学)では、人種・移民・エスノグラフィ分析を中心に、カルチュラル・スタディーズ(文化学)を学びます。

人文学実践演習(社会文化学)では、人々の経験を語る声を記録し、分析して歴史に残すオーラル・ヒストリー(ライフヒストリー)の方法論を学び、実践します。隔年でポストコロニアル・スタディーズも学びます。

先輩たちはどんな研究をしているの?

  • 『進撃の巨人』から見る日本人の戦争観
  • 昭和初期の新聞・雑誌に描かれた男性の外見と男らしさ――長髪を中心に
  • 被爆体験の継承――3世代のオーラル・ヒストリーを通して考える
  • ピンクとブルーのジェンダー・ステレオタイプ――欧米・日本における事例分析を通して
  • SNS上の「炎上」減少と日本のエンタメ――笑いはどこまで許されるのか
  • 戦中・戦後の日本の食――子どもたちは何を食べていたのか

在学生のことば

佐藤 志帆(2021年度入学・社会学領域)

私がこの領域を選んだ理由は、社会学領域の授業を受けて、社会学の器の広さに惹かれたからだ。私は2年生の領域を決める時点で歴史がやりたい!とか心理学をやりたい!などはっきりとやりたいことというものがなかったため、社会学は、実際にはそうではないのだろうが、なんでも研究しようと思えばできそうなところがいいなと思った。
インタビュー調査などは実際に行って経験を積んでいくことでしか慣れることができないというのがこの領域の大変な事だと思う。3回生前期の授業の調査で初めて学外の人にインタビューしたが、友達や学内の人にインタビューをするのとは全く勝手が違っていて難しかった。しかし、実際に人と話して様々な話が聞けると言う点は楽しく、この分野の魅力であると考える。 岡山大学文学部はたくさん領域があるため、もし合格して岡山大学文学部に入ったら1年生のうちに授業やゼミの見学などに行って自分に合う領域、行きたい領域を見つけて欲しい。また、大学受験というのはゴールではなく、大学に入ってからの勉強や生活も重要であるが、勉強を頑張って大学に合格したという経験はその後の自分の人生の自信に繋がるため、自分が納得できるように頑張って欲しい。

前田 匠海(2021年度入学・文化人類学領域)

私がこの分野でとくに文化人類学領域を選択した理由は、日常に存在する「当たり前」に対して抱く些細な疑問を研究対象にできるからです。大学生になったとはいえ、いきなり学問研究と向き合えるかといえば全くそうではありません。そのため、私は日常の延長線上に興味を持つことで大学の学問とのギャップを埋めることを試みました。その試みは見事成功し、今では日常生活の中で目の付け所も変化しています。
分野に共通する主な研究手法の一つとしてインタビュー調査がありますが、大前提として人と話すことから始まるコミュニケーションであるため、老若男女問わず円滑に話すことが求められます。世代にとらわれない会話の機会を重ねることは、社会に出たときに自分だけの特別な経験値となるに違いありません。
大学受験はこれからの生き方に大きな影響を及ぼします。自分の中にある不明瞭でも構わない探究心を大事に、自分の糧になる大学生活を送るために大学のリサーチを欠かさないことをお勧めします。もし、岡山大学文学部でまだ見ぬあなたの探求心にこたえることができるなら、私はとてもうれしいです。未来の自分のために頑張ってください!

教員のことば

北川 博史(地理学領域)

地理学・社会学・文化人類学・社会文化学分野(通称:GSAS)はその名のとおり、4つの学問領域によって構成される複合的な研究・教育分野です。各領域の説明にあるように4領域は研究対象や研究方法、各領域の持つ強みは多少異なっていますが、私たちは、常に「なぜ?」という問いを共有して、実際の空間や社会に展開される様々な事象ならびに関係性、そしてその成立要因、さらには、地域、社会、民族間の差異などに向き合っています。近年、国内外を問わず、民族知や社会知、地域知といった人文知の重要性が高揚していますが、地域の持続的な発展に資するべく、人文知の継承と発展過程の解明などにも取り組んでいます。こうした現実世界に存在する疑問や関心にこたえるためにはフィールドワークなどの活動が求められます。現場主義とも称される研究方法を私たちは得意としており、当分野の学部生、大学院生、そして教員は皆、日々、目を輝かせながらあちらこちらに出かけ充実した研究活動を行っております。来年度、受験予定者の皆様とご一緒できる日が来るのを心待ちにしております。