学部案内

学部長挨拶

田中共子 文学部長 Tomoko Tanaka, The Dean of the Faculty of Letters

 

 環境や人間社会に関する地球的課題の解決から、持続可能な発展への貢献を志す本学の取り組みにおいては、人文社会科学が積極的に関与していくことで、総合大学の真価が発揮されていくものと考えます。我々の学問が持つ、歴史的展望と地理的視野を重ねて社会を読み解くこと、そして人間の営みへの深いまなざしをもって、文明と科学技術との付き合い方を吟味する知を立ち上げることが、変革期の未来へと向かう行動指針に繋がるものと信じます。

  文学部の「研究」活動は、人間の営みを真摯に見つめることを基盤としています。そのため、研究主題は社会の様々な営みと結びついていきます。理系を含む多様な研究分野に、人間研究の視点を加えることによって、社会の課題解決や新たな研究に繋がる可能性があります。文理融合研究や国際共同研究によって研究に広がりが生じ、地域との接点から社会貢献の道筋が見出されていきます。本学が目指す科学的理論と基礎的知見の創出に、確かな研究基盤で応えていく世界がここにはあります。

 文学部の堅実で誠実な、密度の濃い「教育」の営みには実績があります。質の高い卒業論文に向けた研究指導は探究的思考を養い、卒業生からの評価の高い教育活動となっています。積み重ねられた議論と磨き上げられた探究の方法論は、社会での主体的な問題解決の力に繋がっていきますし、次世代への関わりにおいては探究学習の指導に貢献が期待されます。

 現在は、これまでの地盤の上に、学部教育のカリキュラム改革を進めています。分野横断型などの時代性を取り入れた教育を一層充実させ、履修のプログラム化で学びの焦点をさらに明確にしていくことを考えています。大学院との接続も意識しています。研究者養成に焦点化したプログラム開発や公認心理師の国家資格に向けた教育体制など、大学院レベルの教育に磨きをかけていきます。

 教員には優秀な若手や外国人、海外勤務経験者、約3割を占める女性教員がおり、文学部のダイバーシティ&インクルージョンの地盤を支えています。多様な発想を活かすべく、異なる視点から創造の芽を見いだす対話を進め、多様化するニーズへの対応力と変化に向き合う強靱さの発揮を目指しています。互いを認め合うインクルージョンに個を活かし、それぞれが新しい可能性を開く意識を強めることで、飛躍へと歩を進めていきたいと考えています。

 学生の皆さんもどうぞこのコミュニティに参加して、その一翼を担って下さい。大学はいわば知の製造業であり、皆さんは知の製造直売の現場に迎えられます。ここには知の立ち上がる瞬間があります。皆さんが若い知性を磨き、のびのびと活躍できる場でありたいと願っています。そして文学部の学びに重ねて外の眼を持ってください。世界の変化や日本の状況、人々の動きを意識する時代に、私たちは生きています。文学部での学びを糧に、新たな探究と課題解決を、皆さん自身の手で成し遂げていかれますようにと願っています。

2022年4月1日

岡山大学文学部長 田中共子