学部案内

学部長挨拶

宮崎和人 文学部長 Kazuhito Miyazaki, The Dean of the Faculty of Letters宮崎和人 文学部長 Kazuhito Miyazaki, The Dean of the Faculty of Letters

 まず、今回の新型コロナウイルスの感染拡大により様々な形で被害を受けられ、今も苦しんでおられる全国の方々に心よりお見舞い申し上げます。全国の大学生もまた大切な学生生活を奪われることになり、一人の教員として心を痛めています。このような状況下での学部長の責任の重大さをしっかりと受け止めたいと思います。

 さて、文学部と言えば、就職に不利な学部、役に立たないことを教えている学部というイメージで捉えられてきた歴史があります。前者については公開されているデータをご覧いただければ実態を確認いただけますが、後者については昔からずっと議論になっていて、いろいろな形で反論が試みられているものの、なかなか賛同を得られていないというのが現実かと思います。

 文学部が教育研究の対象としている人文学は、人間とその文化について探究する学問です。文学部で教えることは役に立たないと思っている人はいても、人間とその文化について探究しないでいいと考える人はいないでしょう。その研究成果の一部は、義務教育で単純化した形で教えられています。もし大学で人文学を教えないとすれば、人間とその文化について学ぶのは義務教育と高校までで、あとはそれを専門的に研究する研究者がいるだけになってしまいます。そのような知の分布は明らかにいびつです。研究者ではないものの、人間とその文化について一定の専門的な教育を受け、問題意識をもつ人が社会の様々な場所にいるというのが健全で豊かな社会であり、成熟した社会であると言えるでしょう。

 さらに言えば、実際に人文学にはニーズがあるということも大事です。書店に行けば、毎週のように人間とその文化に関する夥しい数の出版物に出会うことができます。ある意味実用性から最も遠い位置にあるとも言える哲学に関する出版がどれだけ盛んであるかは、少し大きな書店に行けばすぐに分かります。文学部に入ってくる学生にアンケートをとれば、志望動機が純粋に学問的な関心にもとづいているという傾向がはっきり出ます。人文学を学びたい人がたくさんいて、その人たちが学びたいことを教えている。そのことだけで、実際に文学部で教えていることは役に立っていると言えるのです。人間は、言葉をもち、言葉で考え、言葉で通じあう生き物、自分の存在についていろいろ考え、自分の内面や対象を表現しようとする生き物であり、そのような人間の本質的な部分を研究するのが人文学なのです。人間は、自然に人文学に関心をもつようにできていると言ってもよいでしょう。

 全国の大学に様々ある文学部は、それぞれが個性をもっています。そもそも文学部にはこうでなければならないという形はなく、自然科学と社会科学以外のすべての分野を包含しうる可能性をもちます。しかし、一つの大学が擁することのできる分野は無限ではありませんので、それぞれの大学が必要・重要と考える分野を中心に、学科やコースを編成することになります。しかし、どのように学科や分野を編成してみても、便宜的なものになってしまいます。そもそも人間とその文化という多面的な対象を探究するのに、平面的な区分は成り立ちません。

 岡山大学の文学部は地方大学としてはかなり大規模で、かつては4学科に分かれていました。その当時から学生数はほとんど変わりがありませんが、ずいぶん前に改組を行い、人文学科1学科になりました。入学前に専門を決めて入学時の専攻で4年間を過ごすというそれまでの制度をやめ、学生は入学後、1年かけて人文学のいろいろな分野に触れ、自分の関心を相対化するとともに、4年間の過ごし方(研究・資格取得・留学・進路)を自分でデザインし、はっきりと目標をもって2年次から専門分野に入るシステムを取り入れました。

 高校時代に大学で学ぶ専門を決めるとしたら、好きな教科で決めるとか、就きたい職業で決めるとかになりがちですが、大学で初めて出会う学問というものもたくさんあり、それらを知らないで専門を決めるのはもったいないと思います。学問には内容と方法があって、内容よりも方法に魅力を感じることもあります。岡大文学部の1年次の授業には各分野の学問の内容と方法を体験できる授業があります。また、高校時代には志望大学の個々の教員のことを詳しく知ることはできませんが、入学後なら各教員の研究・教育活動を身近に見ることもできます。人文学の学問の内容と方法、教員の個性をじっくりと1年かけて観察し、それから4年間の過ごし方を決めることができるというのが、岡大文学部の最大の特徴であり、そのための1学科制です。

 専門教育を受け、4年間の学びの集大成としての卒業論文を作成するといったメインストリームと並行して、教職免許、公認心理師、学芸員などの資格取得や海外留学、海外語学研修を行う学生が多いということも文学部の特徴であり、そうした活動を推奨しています。外国人教師や留学生も多く、外国語で話すチャンスもたくさんあります。

 学生がやりたいことにきっと出会える文学部であり続けたいと思っています。