教員一覧

久保薗 愛(くぼぞの・あい)

教育分野(領域)

日本語・日本文学分野(日本語学)

研究・教育のキーワード

日本語学,日本語史,方言の歴史,方言文献,現代方言

研究者としての私

 日本語学を専門にしています。その中でも日本語の歴史,特に方言の歴史に興味をもってこれまで勉強してきました。

 過去から現在への日本語の変遷を考えるときの材料の一つになるのは古典語です。高校時代に学んだ方が多いと思いますが,古典文法は1つしかありませんでした。

 一方,現代では地域によって話されることばは多様で,それぞれに異なる仕組み(文法や音の区別)を持っています。現在の様相から考えると,過去のそれぞれの地域のことばも異なっていたのでは? 現代方言に至るまでにそれぞれ異なる歴史があったのでは? という疑問が出てきます。日本語の歴史は1つではなく,多様な歴史があり,その一旦を明らかにしたいというのが私の研究です。

 方言史の研究方法はいくつかあるのですが,私は方言が書かれた過去の文献から当時の様相を記述するという方法を採っています。方言で書かれた文献は,数としては多くはなく,歴史記述が可能な地域も限られているのですが,時折そうした文献が残っていることがあり,個々の文献の来歴を考えるのもとても面白く思っています。

 また,現代の方言の状況がわからなければ歴史の記述ができないので,現代方言の調査も行っています。ぜひみなさんと一緒に岡山近隣での方言調査もしてみたいと考えています。

教育者としての私

 大学という場所は,まだ誰もわかっていないことを,既存の知識や方法を駆使しつつ,みんなで考える場です。高校までは,先生からさまざまなことを教わるのが主だったと思います。もちろん大学でも授業で知識や方法論についての教授はありますが,答えがまだ見つかっていないものを対象として考えるものなので,教員にその答えを教えてもらうということはありません。みんなで考えるということは,教員と学生のみなさんの間に差はないものと思います。

 たとえば私であれば日本語史や方言史,九州方言については多少知っているところがありますが(たぶん…),みなさんの母方言やみなさんが勉強している第二外国語,そのほか文学部で学んでいるさまざまな分野のことはみなさん自身の方が詳しいはずです。お互いに持っている知識が違っているだけです。

 ことばの歴史を考える上では,その地域の文化,歴史,場合によっては外国語の知識などさまざまなものが必要です。ことばの仕組みに興味がある方々と,お互いの持っているものを提示し合って一緒に勉強していけたらと思います。

私が書いたもの

方言の歴史記述,入門編,現代方言の記述に分けて挙げておきます。

〇方言史の記述(単著)
(1)「鹿児島方言史における準体助詞の発達」(中部日本・日本語学研究会編『中部日本・日本語学研究論集』,2022年,和泉書院)
(2)「鹿児島方言における過去否定形式の歴史」(『日本語の研究』第12巻4号,2016年,日本語学会)

〇方言史研究の入門(?)編(単著)
(3)「文献に基づく方言研究の方法」(『方言の研究』第9巻,2023年,日本方言研究会)

〇現代方言の記述(共著論文)
(4)久保薗愛・山本友美「椎葉方言の形容詞―6地点の共通点と相違点,形容詞語幹+サニ(シトル)―」(椎葉村方言語彙集編集委員会編『椎葉村方言語彙集』,2022年,宮崎県椎葉村・人間文化研究機構 国立国語研究所)
(5)平子達也・久保薗愛・山口響史「木曽川方言文法概説」(青井隼人・木部暢子編『木曽川方言調査報告書』,2019年,国立国語研究所)