教員一覧

田中 秀和(たなか・ひでかず)

教育分野(領域)

外国語・外国文学分野(英米言語文化学)

研究・教育のキーワード

生成文法、文法論、統語論、比較統語論、局所性、形式と意味、 移動現象、省略現象、英語、日本語

研究者としての私

僕は物心つく前に日本語を話すようになりました。何を当たり前のことを、と思うかもしれません。でも、僕は幼稚園のころからお勉強が苦手でした。それ以前のことはあまり記憶 にありません。いつの間にか日本語を話すようになっていました。「どうやって言葉を覚えたのだろう? もし自分に将来、子供ができたら、どうやって日本語を教えていいのかわからない、面倒だから親に任せちゃおう」と変なことを面倒くさがる子供でした。ずっと後になって、親が僕に日本語を「教えた」わけではないということを知りました。ではどうやって 僕は日本語を覚えたのでしょうか? 言語学を志すようになった背景にはそんな幼少期の馬鹿馬鹿しい空想があったように思います。また僕は教科としては英語が好きでした。英語を母語として話す人たちは、僕が日本語を話すように英語で考え、自然と英語が口にでてくるものなのだろうか?やはり妙なことに興味がありました。

僕個人の幼少期の妄想はさておき、僕たちが知らない間に覚えた日本語の知識は、誰かから教わったものではあり得ないことが沢山あります。例えば日本語では「太郎が花子が読んだって言っているよ、あの本を。」とは言えますが、「太郎が花子が読んだ場所を知りたがっているよ、あの本を。」というのは変である、という事実は日本語を話す人なら理解できると思います。ところが、何故、変な文が変なのかを問われると、説明に窮してしまうはずです。 関係節の中にあるものを無闇矢鱈に動かしたりしてはならないらしい。何故、私たちはこん なことを知っているのでしょうか?中高の文法の授業で、こんなことは教わらなかったで しょう。こうした母語に関する知識の元は何なのか、何故、教えられなくても知っているの か、言葉を詳しく調べていくと不思議なことが沢山あります。

こうした不思議を考えるヒントになるのが、英語との比較です。「日本語と英語は全く違う言語」のように思われがちですが、実は英語でも、That book, John thinks that Mary has lost.は自然な文ですが、That book, John wants to know the place where Mary has lost.とは言えません。やはり関係節の中のものを動かしてはいけないらしい。何故、日本語と同じようなことが英語にもあるのでしょうか? そんな不思議を見つけて論文を書いています。

教育者としての私

大学の授業というのは、高校までの学習と全く変わって暗記科目ではありません。自分で書物を読み、自分で悩み、自分の頭で考えることが大切です。教員はそのために問題を提起したり、見本を見せたり、学生が考えたことの問題点を指摘したり、時には学生とディベー トをして学生と共に成長していくべきだと思ってます。

僕は長い間、海外で過ごし、海外で大学人としての教育を受けて、またカナダ、アメリカ、 イギリスの大学でも教師として過ごしていました。英語圏の大学の学生というのは授業に出 る時間を含めて少なくとも週に40時間の勉強をします。そうしないと授業についてこられな いからです。そういう形式の授業をするので、覚悟を持って授業に望んでもらいたいと思います。また受講生の英語力の強化のため、幾つかの授業は英語で教え、教材も英語で書かれ たものを使います。

私が書いたもの

英語で書いたもので専門性が高いので恐縮ですが近年のものだと、

Multiple Negative Fragmentary Answers (York Papers in Linguistics)、2011 年
Syntactic Identity and Ellipsis (The Linguistic Review)、2011 年
Interrogative Slifting in English (Lingua)、2013 年、Anders Holmberg, Bill Haddican, George Tsoulas との共著
Voice Mismatch and Syntactic Identity (Linguistic Inquiry)、2011 年
Antecedent Contained Deletion in the Domain of a Raised Object (The Linguistic Review)、2014 年

などがあります。多くが図書館でも web 上
(http://www.mitpressjournals.org/loi/ling や http://www.degruyter.com/view/j/tlir)でも見られるもの です。それとgoogleには学術用のGoogle Scholarというサイトがあり、そこに論文と被引用件数のリストがあります。下のリンクは僕の論文リストです。今までに書いたもの全てが載っているわけではありません。

https://scholar.google.com/citations?hl=en&user=Z8jBUq0AAAAJ