教員一覧

鈴木真太郎(すずき・しんたろう)

教育分野(領域)

歴史学・考古学分野(考古学)

専門

自然人類学・考古学分野(生物考古学―バイオアーキオロジー)

研究・教育のキーワード

メソアメリカ考古学、古代マヤ、生物考古学―バイオアーキオロジー、古代国家の生成理論、世帯考古学、移民動態、骨学、安定同位体研究、骨組織形態学、アーキオタナトロジー

研究者としての私

メキシコ以南の中央アメリカに栄えたメソアメリカ諸文明、特に古代マヤ文明を対象とした外国考古学で、古人骨の研究を専門にしています。テオティワカンやアステカ、オルメカなどあまり聞きなれない言葉たちですが、一度はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。もしかしたらケツァルコアトルやテスカトリポカなど当地の神々を聞き及びかもしれません。古代マヤ文明はこういったメソアメリカ諸文明の一角です。

私がこの古代マヤに興味を持ったのは、まだ高校生の頃でした。「密林に眠る謎の古代文明」という心踊るパワーワードにすっかり魅了されてしまい、いつの間にか「考古学で古代マヤの『謎』を『知識』へと変えてやりたい」と思うようになっていたのです。その後、大学ではまず当地の言葉であるスペイン語と外国考古学の基礎を学びました。それから24歳でメキシコに渡り、現地で大学院に通い、現在ではグアテマラ南海岸、ホンジュラス、エルサルバドル等、マヤ圏でも特に南の周縁地を中心に研究を進めています。

古人骨の研究に関心を持ったのもやはりメキシコ留学中のことです。当初は「これこそ古代マヤ」というような巨大ピラミッドのトンネル発掘やマヤ文字碑文の解読などに夢中になっていましたが、ふとした瞬間、「これら偉大な古代文明を築いたのは誰か」という問いに巡り合ったのです。そして、「文明の担い手は常に一般の人々である」ということに気が付きました。それからは華々しい王朝史では決して語られることのない「名前のない」人々の物語が専ら興味の対象です。

自然人類学の多様な知見を学際的に運用し、丁寧に考古人骨を調べると、彼らは彼らの生きた人生を活き活きと語りかけて来ます。もちろんこれは古代マヤに限ったことではありません。声なき彼らの声に耳を傾け、市井を生きた一般の人々の視点から人類の歴史を彩った多くの古代王国の栄枯盛衰を解き明かしていくのが、研究者としての私のこれからの目標です。

教育者としての私

授業では非常に広範な知識を扱いますが、まずもって体系的な理解に重きを置いています。確かに日本人がメソアメリカという地理的にも遠い外国の考古学を学び、同時に文理融合型の考古人骨研究を行うとなると単純に覚えることが多く、聞きなれない単語を大量に暗記する必要にも迫られます。しかし、最も重要なことは筋道を立てて論理的に理解することです。「〜だから〜となる。」これを、コンセプトや用語のレベルできちんと理解すれば暗記もそれほど苦ではありません。

また外国の考古学に取り組む以上、できる限り多くの原書文献にあたることも大事だと思っています。授業では必ずいくつかの原書論文を読み込み、グループで議論、その後、パワーポイントのスライドを用い要点をまとめることで、内容を補完して行く形式を取っていきたいと思っています。

卒業論文やさらに大学院レベルでマヤ考古学あるいは考古人骨の研究を専攻したいという方がいらっしゃれば、もちろん大歓迎です。長期休暇等を利用しながら実際に現地へ渡航し、2000年以上も前の非常に古い個体群も含め、様々な考古人骨にあたって頂きます。その際にはスペイン語を事前に習得してあるのが理想ですが、未習得であっても差し当たり現地での作業等は私が指導します。十分に卒論のテーマとして選んで頂くことが可能だと思います。また、とりわけ自然人類学や生命科学についての先行する専門知識がなくても問題ありません。授業やゼミ等を通じて大枠を習得して頂くことが可能ですし、我々が目指すものは飽くまで古人骨の研究を通じて考古学的な古代、歴史の理解を進めることです。そういったいわゆる「理系」の知識を考古学コンテクスト上で適切に運用できる包括的な能力が肝要だと思っています。どんなことでも興味を持ったら、その日が吉日です。ラテンの風に吹かれながら、一緒に古代マヤ文明の謎に挑んでみましょう。

私が書いたもの

鈴木真太郎、「頭蓋変形:マヤに息づく二千年の伝統」、『グアテマラを知る67章』 桜井三枝子編、明石書店、pp.95-97、2018
3ページにも満たない小さなコラムですが、メソアメリカの古代文明でエスニシティと密接な関係を持っていたとされる頭蓋変形の習慣について、最新の知見を交えて解説をしています。

鈴木真太郎、「古代糧食文化復元のための生物考古学:マヤ文明黎明期におけるグアテマラ南海岸地方からの展望」、『金沢大学考古学紀要』、金沢大学、39号、pp.81-93、2018(金沢大学学術情報リポジトリにて公開中)
少々硬めの論文ですが、考古人骨の研究から得られる古代マヤの人々の食生活、食文化に関する知見について議論をしています。

鈴木真太郎、「ストロンチウム及び酸素安定同位体による移民動態の再構築:古典期コパン王朝史における新たな展望」、『異分野融合研究によるマヤ考古学の新展開』 中村誠一編、金沢大学、pp.35-60、2017(金沢大学学術情報リポジトリにて公開中)
安定同位体分析を使った移民動態の復元と、そこから考えられるとある古代王国の実態について論じています。日本語、スペイン語の2ヶ国語版があります。