教員一覧

京 健治(きょう・けんじ)

教育分野(領域)

日本語・日本文学分野(日本語学)

研究・教育のキーワード

日本語学、日本語史、文法、古典語、現代語、複文、並列表現、方言史、助動詞、助詞

研究者としての私

日本語がどのように推移し、現在見るような姿へ変化したのかということに関心があります。日本語の歴史の中でも文法史を中心に研究しています。日本語、特にその歴史を研究しようと思ったのは、大学生の時のゼミでの経験が大きかったように思います。2年生から4年生までが一緒にテキストを読み進めるというもので、そのときは『大和物語』を扱っていました。1段1段、丹念に読み進めるというものでした。高校時代までの古典の文学作品を、辞書を引きながら、現代語訳するという作業とは違い、助動詞や助詞の使い方を、沢山の例を見ながら、考え直すという作業はとても新鮮なものでした。ことばを分析することに興味を持つようになったようです。大学院進学後は文法史の中でも、助詞・助動詞について研究するようになりました。現在の研究テーマでもある、並列表現に与る助詞「し」「たり」「なり」の成立と展開
を中心に、それらと関連するであろう言語事象についてあれこれ考えています。

「煮たり焼いたりして食べた」のように使われる助詞「たり」は古典語の助動詞「たり」の終止形に、「このホテルは部屋はきれいだし、料理はうまいし、サービスもよい。」のように使われる助詞「し」は古典語の形容詞終止形の「-し」語尾、また、「コーヒーなり紅茶なり、お持ちしましょうか。」といった助詞「なり」も助動詞「なり」の終止形がその成立に関係しているといわれています。私は、その来歴が古典語終止形に由来するとされる助詞が如何なる経緯によって助詞化し、現在見るような姿へ転じていったのか、その史的展開を明らかにし、並列表現史の一端を解明することを研究テーマとしています。

教育者としての私

日本語を母語とする人からすれば、「日本語」なんて研究しても意味がないと考える人もいるでしょう。実際、「日本語」のことなんて、勉強しなくても、普段の生活で困ることは余りありません。まして、古い日本語がどうであったかなどは……。でも、私たちが使用している「日本語」とはどういった性格を持ち、また、どのように推移していったかということを知ることも大切なことだと考えます。授業では特に「日本語の歴史」についてこれまでの研究成果を噛み砕いて説明しています。日本語の歴史については、長い研究の歴史がありますが、それでも分かっていそうで実はよく分かっていないことは沢山あるのです。私自身の研究もそうした未解決の言語事象のいくつかを取り上げているということになります。研究を行うにあたって、大切なことは、「分からないことが分かる」ということでしょう。問題点を見つけ、それについて答えを導き出すべく、作業を行うということになります。「日本語」-現代語でも古典語でも構いません-に興味関心がある人は勿論のこと、「日本語の研究なんて」と思っている人にも是非授業を受けて欲しいと思います。〈自分のことば〉を見つめ直すいい機会にもなることでしょうから。

私が書いたもの

研究内容の項目に書いたように、私は現代語に於いて並列表現に与る助詞の成立及び展開を中心に論文を書いてきました。以下に、その中からいくつか紹介します。①「接続助詞「し」の成立過程」(『島大国文』28号・平成12年3月)、②「接続助詞「し」の意味用法とその来由」(『島大国文』平成27年3月)、③「並列助詞「なり」成立の経緯再考」(『岡大国文論稿』42号・平成26年3月)、④「動作作用の並列表現形式の推移―「たり」形式への収斂―」(『語文研究』116号・平成26年12月)、⑤「現代語に於ける並列助詞「たり」の一用法―〈同類要素非含意用法〉をめぐって」―」(岡山大学学術成果リポジトリ・岡山大学文学部プロジェクト研究報告書巻22号)⑥「否定の助動詞「ない」の来源再考」(『島大国文』30号・平成14年3月)、⑦「並列表現史の一側面―「Vナカッタリ(スル)」形式の推移―」(『語文研究』102号・平成18年12月)、⑧「「ウズ」「ウズル」」(『国語国文』第64巻第2号・平成7年2月)、⑨「「ウズ」「ウズル」の衰退に関する一考察」(『文献探究』39号・平成13年3月)など。