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吉田 浩(よしだ・ひろし)

教育分野(領域)

歴史学・考古学(西洋史学)

研究・教育のキーワード

近現代史、ヨーロッパ、ロシア、国際関係、政治社会史、美食の文化史、北方領土、農奴解放、史学史

研究者としての私

チャイコフスキー、ムソルグスキー、ドストエフスキーなど隙のない作品で有名な、また誰もが好きな芸術家たちは同じ時代、同じ国で活躍しました。19世紀後半のロシアです。彼らが生きていた世界はどんな色、音、匂いをしていたのでしょうか。そこにはどんな人間関係があったのでしょうか。そんな関心から近代ロシア史の勉強をはじめました。

大学に入学したのは1984年で、翌年にはゴルバチョフがソ連共産党書記長となりました。それまでロシア(ソ連)への留学は特定の政治・宗教関係者以外に開かれていませんでしたが、ペレストロイカのおかげで文化交流協定ができ、第1回日ソ政府間交換留学生の一人として89年から2年間モスクワ大学大学院で学びました。初めての海外生活で日露の文化の違いにとまどうこともありましたし、ソ連崩壊前夜ということで国も荒れていましたが、混乱のなかでも文化大国でありつづけ、新しい文化を生み出そうとしている人々に感銘を受けました。

1995年に岡山大学に赴任してからは、伝統的な紛争解決方法をもちいていた農民を国家はどのように近代的な法体系に組込もうとしたかという研究にすすみ、98年から2000年まで再びロシアで史料研究をおこないました。現在は、農奴解放(1861年)がなぜ実現したのかについて調べており、主要な史料である当時の皇帝アレクサンドル2世の(悪筆で読みにくい)日記を読むために毎年ロシアに短期出張をしています。

数年前からは趣味と実益を兼ねて美食の研究もしています。歴史学が扱う食の研究は砂糖やジャガイモ、お茶など民衆の生活に即したものがほとんどですが、皇帝や貴族の食卓も立派な文化です。「ロシアの貴族文化はフランス料理にどんな影響を与えたか?」これが当面の研究課題です。

教育者としての私

歴史を学ぶことで、現代を知ることができるとよくいわれます。過去と比較することで、現代の特徴がわかるからです。特に直近の過去と比較する場合、相違点と相似点がわかりやすいので、授業では近代以降のヨーロッパ・アメリカ史、特に19~20世紀の歴史の理解に力をいれています。イメージしやすくするため、可能な限り映像資料を用いるようにしています。西洋史で卒論を書こうと思っている人には、どの時代、どの地域を対象とする場合にも、同時代のヨーロッパ史全体との関連を常に考えてもらいたいと思います。

近現代史の場合、現在まだ未解決の問題を過去にさかのぼり、その源を歴史的な側面から解明して今後の解決の糸口をさぐることもできます。その視点から北方領土をめぐる歴史的な問題についても数年に一度講義しています。この問題は近現代の日本の歴史はもちろん、世界史における国境とは何か、国とは何かという本質的な問いへとひろがっていきます。

歴史を勉強する際に重要なことは、過去の知識をどれだけたくさん覚えるかではなく、過去を理解する方法を身につけることです。そのために演習では史料を読解し、歴史像をつくるための歴史研究法を紹介しています。歴史的に考える習慣が身に付けば世界が違ってみえるようになるでしょう。現代の日本ではアメリカ的な視点が支配的で、それを基準に政治や経済、さらには大学での教育の方法や改革の方向まで語られます。授業ではヨーロッパやロシアなど複眼的な視点を付け加え、みなさんが自分の頭で考えるための材料を提供していきます。

私が書いたもの

いままで研究してきた4つの分野それぞれについて1点ずつ紹介します。

  1. ロシア農村における法と裁判」(『ロシア史研究』No.53、1993年)はソ連留学時の成果の一つで、農奴解放後に自治権を得た農民たちが村の裁判所で紛争をどのような規範やしきたり(慣習法)によって解決していたかについて未公刊文書を利用して分析しました。
  2. 19世紀中葉‐20世紀初頭ロシアの貴族文化と宮廷料理」(『食生活研究』No.27-1、2006年)は私の食文化史研究事始めで、ロシア皇帝や貴族の食生活の実態を明らかにし、フランス料理とロシア貴族文化は相互に重要な影響を与えていたことを具体的に示しました。
  3. Крестьянский правопорядок и политика юридической интеграции крестьянского сословия в пореформенной России(РОССПЭН, 2008)は農奴解放後ロシアにおける農民の法秩序と法的包摂について分析したもので、伝統的な紛争解決策(慣習法)と国家法のせめぎあいについてモスクワ大学時代の恩師のお誘いに応えロシア語で発表しました。
  4. 農奴解放の開始から大改革へ」(『ロシア史研究』No.90、2012年)は農奴解放のきっかけはクリミア戦争であるという通説を批判する試みで、現在もこのテーマを深めています。

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