教員一覧

松本 直子(まつもと・なおこ)

教育分野(領域)

歴史学・考古学分野(考古学)

研究・教育のキーワード

縄文文化、ジェンダー、認知、狩猟採集社会から農耕社会への転換、文化進化、文化伝達、シミュレーション、土器、土偶

研究者としての私

高校生の頃から、昔の人々の生活や異文化に興味がありました。自分がよく知っている社会と全く違う生き方がどんなものか、生き方が違っていても人として考え方や感じ方などは共通しているのか、というところに関心があったのだと思います。大学では、心理学や宗教学、人類学などに進むことも考えましたが、最終的に考古学を選びました。興味があるのは精神的な事柄ですが、だからこそ形があり、見たり触ったりすることのできる物質資料を対象とする考古学の方法に魅力を感じたからです。研究テーマとしては、人類誕生以来の基本的な生活様式の狩猟採集社会である縄文時代から農耕社会である弥生時代へと変化していく時期を選びました。卒論では土器の時間的変化を、修論では地域性のあり方について、土器と対面しつつじっくり取り組みました。博士課程からは、認知心理学のゼミにも参加し、本格的に認知的視点を考古学に取り入れる研究に着手しました。

私が認知考古学を追求する目的のひとつは、過去の社会をできるだけ包括的に理解しようということですが、そのためにはジェンダーの視点も重要ではないかということに、大学院生時代に気が付きました。海外では、ジェンダー考古学がすでに盛んになっていましたから、その視点や成果を学びつつ、日本ではどうして女性の考古学者が増えないのか、という問題を考えたりもしました。考古学は、文字のない時代も含めて長期的な文化変化を追うことができるので、ジェンダーのあり方がどのように変化するのかについて、現代社会を見るだけでは分からない新たな知見を得ることができる、発展性のある分野です。

土器や土偶等の考古資料から、認知やジェンダーについて復元することは容易ではありませんので、科学性や客観性をいかに担保するかということに、常に心を砕いています。個人の脳内で起こる認知的処理そのものを直接観察することはできません。考古資料は、過去に生きた個々の人々の行為の結果の集積です。文化進化も、個人がいかに文化を継承し、変容させるかというプロセスによって生じます。その状況をよりよく理解するために、最近はエージェントベースのシミュレーションなどを利用した研究も行っています。

教育者としての私

大学生活を通してみなさんに身につけて欲しいのは、人生設計力です。どのような生き方をしたいか、しっかりと考えて欲しいと思っています。それを考えるためには、世の中や人間についての確かな知識と論理的思考力が必要です。もちろん、人生は自分の思い通りにはなりませんし、いろんな偶然や運に左右されるところも大きいでしょう。ただ、岐路に立たされた時、あるいは日々の生活においても、何をするか、どちらの道を選ぶかという判断は、自分が持っている知識によって変わってきます。生きる力、楽しむ力を身に付けるうえで、大学時代に学ぶことはとても重要です。

私は、考古学の概説、講義、演習に加えて、教養科目でジェンダーに関する授業も行っていますが、どの授業もできるだけ新鮮な驚きを感じてもらえるものにしたいと考えています。新しい知識や研究方法、考え方に刺激を受けて、みなさんたち自身が「当たり前」の壁を打ち破る思考力を身につけて欲しいからです。研究には厳しいところもたくさんありますが、それを知ってもらうことも、玉石混交の情報が溢れる現代社会で、適切な判断をする力をつけるのに必要なことだと思います。

私も教えることを通して学びたいと思っています。実際、これまで授業の中で学生に気づかされたことや教えられたことはたくさんあります。学問の場では、遠慮する必要はありません。積極的に意見交換ができるような授業をみなさんと作っていきたいと思います。

私が書いたもの

『認知考古学の理論と実践的研究―縄文から弥生への社会文化変化のプロセス』(九州大学出版会、2000年)は、私の博士論文を出版したものです。心の問題が考古学においてどのように論じられてきたかについて整理し、文化や社会の変化の実態に、認知的要因に着目することでいかにせまることができるかを検討しました。『認知考古学とは何か』(青木書店、2003年、中園聡・時津裕子と共編著)は、認知考古学的な実践研究を集めたもので、認知考古学の考え方や概念を分かりやすく説明しています。『縄文のムラと社会』(岩波書店、2005年)では、縄文時代の生活の様子や文化的特徴について、ジェンダーの視点も交えながら解説しました。イラストレーターの細野修一さんと相談して、挿絵も工夫しました。ぜひ手にとってみてください。

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