教員一覧

齋藤 圭介(さいとう・けいすけ)

教育分野(領域)

地理学・社会学・文化人類学・社会文化学分野(社会学)

研究・教育のキーワード

公共社会学,規範理論,社会学史,ジェンダー理論,社会学方法論,社会調査法,生殖補助医療,生命倫理学,身体

研究者としての私

わたしは社会学を専門に研究・教育をしておりますが,なぜ社会学の研究者を志したのか,いまとなっては正確には覚えておりません.せっかくの機会なので記憶をたどって思い出してみたいと思います.

中学生のころから漠然と,大学では哲学や言語学あるいは心理学を勉強しようと志していたように記憶しています.わたしが中高生のころは,ちょうど2000年目前の文字通り世紀末であり,社会もいろいろと相対的に大きな変動を経験した時代だったと思います.価値観の多様化が一気に進んだ頃でもあり,インターネットが社会に普及しはじめた時期でもありました(当然スマホもなく,ガラケーすらなく,ポケベル(!)が出始めた頃です).そうした社会の大きな変化に並行するようにさまざまな社会問題が顕在化し,多感な年頃だったわたしは社会について考える機会が増えていったように思います.大きな社会変動のなかで中高生時代を過ごしたことで,抽象的な対象を扱う学問よりも,より具体性を帯びた対象を扱う学問に関心が移っていきました.結局,大学では政策科学を選び,そのまま大学院も政策科学を学びました.

しかし,政策科学を学んでいくなかで,なにか具体性を持ちすぎていて,現実の社会問題をもぐら叩きのように解決しているような印象を抱いていきます.個別の社会問題を考えることは非常に大切な作業であることは間違いないのですが,わたしはより抽象度が高い〈社会の構造〉を考えたいと思い,政策科学の修士課程のうちから社会学の授業にもぐって勉強していました.そのうち,いつしか社会学の学問としての奥深さに惹かれていきます.いわば,もぐら叩きの個々のもぐらを研究するのではなく,もぐら叩きが生じている構造――もぐら叩きの機械そのものや,もぐらを叩いている人間,あるいはもぐら叩きをすることが当然となっているいまの社会――を研究したくなったのかもしれません.

そして,社会学を一からしっかり学ぼうと,政策科学の修士課程を修了したのち,社会学の修士課程に入りなおして,そこからは社会学一筋に過ごしてきて,いまに至ります.

教育者としての私

学生には,幅広い問題関心をもって能動的に勉強をして欲しいと思っております.狭い領域に閉じこもるよりも,できるだけ学問領域を自由に横断して,見識を広げるような学び方をしてもらいたいです.岡山大学文学部は,いろんな分野を学べるという点で非常に恵まれているので,ぜひ使えるリソースは貪欲に使ってください.それと同時に,専門性を深めることも忘れずに,幅広くかつ深く,学問にたいしてもっと貪欲に・欲張りになってもらいたいなと思います.

授業ではできるだけ社会学の面白さを伝えられるように考えています.面白さと同時に,社会学の考え方や社会学なりのモノの観方を学んで欲しいですし,それを伝えられるように授業を構成しています.いまの時代,情報はインターネットを使えばすぐに得ることができますので,授業では何かを覚えるというたぐいのものよりも,情報をいかに扱うのかといったことに時間を割いて講義をしています.目の前の社会現象や社会問題の一歩奥にある社会の構造を捉えるという社会学の視線は,対象がなんであれ応用できるものです.社会学を学ぶことで,世界の見え方もガラっと変わるかもしれませんよ.

また社会学の授業では,社会統計学も教えます.文学部ということで数学嫌いの学生が多いようですが,多くの場合は食わず嫌いになっているだけのようです.数学嫌いの学生でも理解し,主体的に学びたいと思ってもらえるように,とりわけ統計学では面白い小話などもいれつつ工夫して講義を進めていくよう心がけています.データをいかに読み解くかは,いまの時代は統計リテラシーとも呼ばれ,語学能力と同じくらい必要な時代です.臆せず,統計学を学んでほしいと思います.

社会学を学ぶうえでなにより大切なことは,知的好奇心です.なんにでも関心をもって,日々の生活で生まれる問いを大切に育てる作業を,学生と一緒にしていきたいと思っております.

私が書いたもの

社会学者として自分の専門はなにかといわれると,さいきんは口ごもってしまうことも増えました.というのは,さいきんの問題関心は大別すると,ジェンダー研究と社会学の方法論の2大柱になっているからです.いまは,どちらの問題関心も同じくらいの比重で日々の研究活動を展開しています.

ジェンダー研究関係では,生殖とジェンダーの問題に関心をもって研究してきました.一般に手に取りやすい本としては,以下のものがあります.

2011,「男性学の担い手はだれか」千田有紀編『上野千鶴子に挑む』勁草書房,58-87.
2013,「ホモソーシャリティ」木村涼子・伊田久美子・熊安貴美江,『ジェンダー・スタディーズ入門――人文社会科学から自然科学まで』ミネルヴァ書房,202-203.
2015,「〈リベラリズムの生殖論〉から〈ケアの生殖論〉へ」金井淑子・竹内聖一編『ケアがはじまるところ』,ナカニシヤ出版,84-106.
2016,「アイスランドのジェンダーと同性婚」小澤実・高橋美野梨・中丸禎子編『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための60章』明石書店,205-209.
2016「〈セクシュアリティは本質か構築か〉という問いをめぐって」西岡正子編『未来をひらく男女共同参画――ジェンダーの視点から』ミネルヴァ書房,23.
翻訳に,
2017,マーゴ・デメッロ(2014)『ボディ・スタディーズ』共同訳

社会学の方法論ですと,やや専門家向けのものばかりとなります.さいきんは,質的比較分析法(QCA)と呼ばれる方法を研究しております.

2012,「データからみる『社会学評論』――投稿動向と査読動向を中心に」日本社会学会『社会学評論』編集委員会報告書,5-26.
2013,「学会誌における若手研究者の実態――『年報社会学論集』と『社会学評論』の比較から」『年報社会学論集』26,87-98.
2015,「戦後日本の社会学者は何を考えてきたのか――日本社会学会を対象とした定量的分析の一考察」『年報社会学論集』28,172-183.
2017,「質的比較分析(QCA)と〈社会科学の方法論争〉」『社会学評論』270.
翻訳に,
2016,リウー&レイガン(2009)『質的比較分析(QCA)と関連手法入門』共同監訳

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