教員一覧

松村 圭一郎(まつむら・けいいちろう)

教育分野(領域)

地理学・社会学・文化人類学・社会文化学分野(文化人類学)

研究・教育のキーワード

所有と分配、贈与論、経済人類学、民族間関係、貧困と援助、 国家と市場、海外出稼ぎ、エチオピア、中東、セトウチ

研究者としての私

これまでエチオピアの農村部などで、現地の村で人びとと生活をともにしながらフィールドワークをしてきました。最初にエチオピアに行ったのは、大学3回生を終えたあと1年休学して。それ以来、20年あまり毎年のようにエチオピアの村に通い続けています。とくに、①人びとがどのように限られた富/資源を自分のものにしたり、人に分け与えたりしているのか(所有と分配/贈与論)、②村に住む複数の異なる民族が、どのような関係を築いているのか(民族間関係/コミュニケーション論)、③アフリカ農村のようなローカル社会と国家や世界市場のような大きな枠組みがどのような関係にあるのか(贈物と商品/海外出稼ぎ/国家と市場/グローバル化)などについて研究してきました。最近は、エチオピアへの国際的な食糧援助やエチオピア女性の中東への出稼ぎなどの調査をしていて、世界的な富の不均衡や格差とどう向き合えばよいのか、考えています。つねにフィールド(エチオピアなど)とホーム(日本)を往復しながら、社会や世界の成り立ちを考えていく、という意識で研究してきました。なぜ「わたし(たち)」は、こういう世界のあり方を「あたりまえ」として生きているのか。別の世界のあり方をどうやったら想像/創造できるのか。そんな問いに取り組んできたように思います。2015年4月に岡山大学に来てからは、「セトウチ」(中四国)の島や山に魅せられ、この場所から世界について考えたいと思いながら、いろんな場所を訪ね歩いています。

教育者としての私

「学問」の場としての大学にとって重要なのは、さまざまな多様な知識や経験をもった人びとが集まり、自由な対話をとおして創造的なアイディアを育んでいくことだと思います。教員も、学生も、その対話に参加する対等な一員です。大学の「教育」は、かならずしも「知っている者」が「知らない者」を一方的に教え育てるものではありません。教える側に立つ者も、つねに「教える」という行為を通して、学び続けています。そういう意味では(このプロフィール欄は分かれていますが)、大学での「研究」と「教育」は分離された営みではありません。私自身、これまで教壇で学生に何を語ればよいかを考えることで、文化人類学という学問への理解を深めてきました。また、ゼミでの学生の発表や議論を通して、あたらしい現象やアイディアに触れ、自分の考えを深めるヒントを得てきました。つまり、大学がきちんと「大学」として機能するためには、教員と学生が「まだ自分たちには学ぶべきことがある」という認識を共有しながら、この世界や自分自身のことをよりよく理解するための知的探究の試みに一緒に参加している必要があります。逆に言えば、その探究に関係ない事柄はあまり重要ではありません。授業に出て、試験を受けて、単位をとって卒業する。そのこと自体が大学という場の目的ではありません。授業やそれ以外のさまざまな機会をとおして、この世界や人間についてともに学び、考えながら、人間として成長できるかが鍵だと思います。最初から大学で何を学べばよいか、わからないかもしれません。それでいいと思います。「まだ知らない何か」を探究してみたいという意欲をもち、数年後にいまの自分には想像できない「まだ知らない自分」になりたいと願う学生たちと、ともに学び続けていきたいと思っています。

私が書いたもの

これまで3冊の単著を出しました。1 冊目は『所有と分配の人類学:エチオピア農村社 会の土地と富をめぐる力学』(世界思想社、2008)。博士論文をもとに、ある富が誰かのものになる「所有」について考察した本です。「民族誌」といわれる人類学の学術書なので、やや難しいかもしれませんが、人類学者がフィールドワークをもとにどうやって問いの考察を進めるのかを知るにはいいかもしれません。2 冊目は、『ブックガイドシリーズ基本の30冊 文化人類学』(人文書院、2011)。これは文化人類学の名著30冊を選び、その本を書いた人類学者の生い立ちやその本の与えた影響などを紹介する本で、文化人類学のおおまかな全体像を知りたいという人には、わかりやすいと思います。そして、3冊目の『うしろめたさの人類学』(ミシマ社、2017)は、私がエチオピアと日本を往復しながら考えてきたことをわかりやすくつづった本です。その他、編著の『文化人類学の思考法』(世界思想社、2019)など、本の一部の章を分担執筆したり、論文を書いたりしてきました。詳しくは私の個人 HPをご覧ください。 ミシマ社のWeb 雑誌「みんなのミシマガジン」でも連載を続けています。

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