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橘 英範(たちばな・ひでのり)

教育分野(領域)

外国語・外国文学分野(中国言語文化学)

研究・教育のキーワード

唐詩、中唐詩、唱和詩、聯句、白居易、劉禹錫、表現、自然描写、女性描写

研究者としての私

私は唐の時代の詩、中でも特に「中唐」と呼ばれる時代の詩を中心に研究しています。

この中唐と呼ばれる時代は、散文のジャンルでは古文復興運動が起こり、小説のジャンルではいわゆる「唐代伝奇」の名作が次々と生まれた時代で、文学史上の変革期と考えられています。その中唐の時代に活躍した詩人の中でも最も有名で、日本の文学にも大きな影響を与えたのが、白居易(はくきょい)、日本では字(あざな)の白楽天(はくらくてん)で知られる詩人です。この詩人には、たくさんの友人がいましたが、晩年に最も親しかったのが劉禹錫(りゅううしゃく)で、彼らは多くの詩を唱和し(そうして作られた作品を唱和詩といいます)、また複数の詩人で一首の詩を作る聯句というジャンルの作品を作りました。こういった、詩人たちの文学的交流が非常に盛んになったのも、実はこの中唐と呼ばれる時代になってから見られるようになった新たな現象なのですが、私はそれに興味を持って研究を始めました。変革の時代に生まれた新たな現象を研究すれば、きっと当時の詩人たちの思いに迫ることが出来ると考えたからです。

こうして、唱和詩や聯句を読み始めたのですが、どうも色々と細かいことが気になる性格らしく、その中に出てくる自然物(例えば月であったり、竹であったり)や、女性の美しさなどを、詩人たちがどのように表現しているのか、というような点が次から次へと気になるようになり、唱和詩や聯句の研究はなかなか進まないまま、たくさんの脇道にそれてきているという状態です。

教育者としての私

とても教育者と呼べるような人間ではありませんので、ここでは私の授業の特徴について簡単に記させていただこうと思います。私の授業の特徴ですが、自分では主に2つの特徴があると思っています。

まず1つ目の特徴ですが、上にも書きましたように、私自身、「何が表現されているか」ということもさることながら、「いかに表現されているか」ということが非常に気になる性格ですので、授業でも、「どのように表現されているのか」・「詩人はどうしてそのように表現したのか」ということをよく問題にしています。ですから、「何が表現されているか」ということだけに興味があるという方にはあまり向かない授業を行っていると思います。

つぎに2つ目ですが、やはり私自身が、文学作品の解釈というものは、多くの可能性があるもので、正しい解釈が必ず1つだけ存在しているわけではないと考えておりますので、授業でも、多様な解釈の余地を残したままで詩を読み終えたりすることも多いです。ですから、「たった1つの正解」といったものが手に入らないとどうも落ち着かないという方にもあまり向かない授業を行っていると思います。

私が書いたもの

自分が書いたものには、やはり自分としてはそれぞれに思い入れがあるものですが、これもここでは1つだけ挙げておきます。「胸前の雪―白詩における女性美表現管窺―」(『白居易研究年報』第5号、勉誠出版、2004年)というものです。白居易に「上陽白髪人」という有名な詩があるのですが、その中に「臉(おもて)は芙蓉(ふよう)に似て胸は玉(ぎょく)に似たり」という句があります。女性の美しさを表現した句ですが、そのために白居易は、「芙蓉=ハスの花」に似た顔と、「玉」に似たバストを用いているのです。この詩を読んで、「顔の美しさは昔からよく表現されるが、バストの美しさを表現することは珍しいのではないか」という疑問を抱き、色々と調べることによってできた論文です。女性のバストの美を詩に詠じ始めたのが白居易であると思われることや、後の時代の詩への影響、さらに、出土資料等によると唐の時代には早い時期から女性の胸元が大きく開いてバストを強調した服装が流行したことが分かるのですが、唐代後半の白居易に至るまでそれが詩に詠じられていないのはなぜか、といった点について論じています。

「上陽白髪人」という詩は有名なのですが、この表現について論じられたことはありませんでした。「いかに表現されているか」が気になるという、私の性格があったからこそ生まれた論文といえるのではないかと思いますので、ここでご紹介してみました。

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