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本田 晃子(ほんだ・あきこ)

ahonda*okayama-u.ac.jp(*の部分を@に変えてください)

教育分野(領域)

芸術学・美術史分野(芸術学)

出身大学/大学院

早稲田大学教育学部/東京大学総合文化研究科

おもな所属学会

日本ロシア文学会、表象文化論学会

研究・教育のキーワード

建築、都市、表象文化論、ロシア、メディア論、アヴァンギャルド、全体主義

研究者としての私

私が研究対象としているのは、建築や都市のイメージ、つまり「表象」です。これまでの研究の中では、都市や建築といった三次元の空間が、絵画や写真、映画、マンガなどの平面にどのように変換されうるのか、そこでは作者の意図や社会的・文化的システムがどのように作動しているのかを論じてきました。本物の建築物ではない、イメージのなかの都市や建築を研究することに意味があるのかと思われるかもしれませんが、実はわれわれは三次元空間と同じくらい、二次元化された空間のイメージにも依存して暮らしています。とりわけマスメディアが社会に浸透した20世紀以降、イメージとしての空間の重要性は、リアルな空間のそれを凌駕してしまったといってもいいかもしれません。

たとえば旅行に行くときに、その場所の写真や地図をまったく参照しない人は少ないでしょう。かつては紙に印刷された地図や旅行書が、今ではインスタグラムやGoogle Map、あるいはGoogle Street Viewのようなサーヴィスが、これから訪れるはずの場所や空間のイメージを、さまざまなかたちで提供してくれます。多くの人は、メディアから得られたこれらの情報を頭の中で編集し、あらかじめ場所や空間のイメージを組み立てるのではないでしょうか。

さらにいえば、このような空間イメージは、皆さんがその場所を経験するのに先立って、その場所の印象や受け取りかた、その場所で皆さんがどのように振る舞うかといったことを、あらかじめ決定してしまう可能性すら有しています。これは見方を変えれば、イメージの操作によって、特定の空間に対する印象や、そこでの人びとの行動をコントロールしうることを意味します。私の研究では、20世紀前半に生まれたモダニズムや全体主義体と呼ばれる政治・芸術思想の下で、建築や都市のイメージがどのように編集され、人びとの思考や行為がどのように操作されることになったのかを分析しています。

教育者としての私

不思議なことに、小学校から文章の読み方・書き方の学習は義務化されているにもかかわらず、イメ ージをどのように取り扱うべきかを学ぶ科目はありません。私は、これは実は非常に危険なことだと考え ています。イメージはしばしば文章よりも強く感情に訴えかける力をもっており、一枚の画像は時に膨大 な人びとを動かす力をもちます。しかもイメージは近年ますます容易に編集・操作可能になっています。 報道や広告、あるいは SNS 上でシェアされる写真まで、イメージとは文章と同等、あるいはそれ以上に、 慎重な取り扱いを要するものなのです。

したがって私の授業は、常にイメージの批判的読解を柱として組み立てています。ただ何となくイメ ージを消費するのではなく、イメージを分析し、そのイメージがいかなる意図のもとで、どのように組み 立てられているのかを考察すること。たとえば、キリスト教の文化圏で 16 世紀から 17 世紀に描かれた 絵画では、咲き誇る花々のイメージは、「美しさ」と同時にその美しさが一時の空しいもの(ヴァニタス)で あることをも意味します。これはキリスト教文化を知っていなければ、理解できません。たとえば、20 世 紀を代表する建築家ル・コルビュジエは、写真に写った自身の建築作品を、しばしば後から白く塗りつ ぶして修正しました。彼のこのような行為も、20 世紀初頭の建築や絵画をめぐる文脈を知らなければ、 理解できません。芸術学を学ぼうとする皆さんには、単に知識を身につけるだけではなく、それを元に 自力でイメージを読み解き、一枚のイメージの背後で作動しているメカニズムを知ることの、スリリングな 楽しみを味わってほしいと思います。

そして何より、日々否応なくイメージに取り囲まれて暮らすわれわれにとって、イメージを意識的・批判的に読み解く力は、現代社会をサバイバルするうえで必須の能力です。授業を通じてイメージとの適切なかかわり方、扱い方を知り、イメージに翻弄されるのではなく、イメージを楽しみ、有意義に使いこなせるようになってもらいたいと思います。

私が書いたもの

『ジブリの教科書 13 ハウルの動く城』(文藝春秋社、2016 年、共著)
『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』(エクスナレッジ、2015 年、共著)
The Image of the Region in Eurasian Studies (KW Publishers, 2014 年、共著)
Дальний восток, близкая Россия: Эволюция русской культуры ?взгляд из Восточной
Азии (Логос, 2015 年、共著)
『天体建築論――レオニドフとソ連邦の紙上建築時代』(東京大学出版会、2014 年)
「映画は建築する――『輝ける道』に見る社会主義リアリズムの象徴空間」(『ロシア語ロシア文学研究』第 45 号、2013 年 http://yaar.jpn.org/robun/bulletin45/bulletin45)

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