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出村 和彦(でむら・かずひこ)

教育分野(領域)

哲学・倫理学分野(倫理学)

研究・教育のキーワード

ギリシア哲学、へレニズム倫理学、初期キリスト教思想、ソクラテス、 アウグスティヌス、「心」、人生観、徳、貧困、老齢

研究者としての私

大学1-2年生の時は教養学部で、語学文学や歴史をいろいろかじっていながら、やはり根本的に西欧のものの考え方を理解するために古代ギリシア人間の古典的な生き方の形をとらえようと、若き日のニーチェが学んだように古典文献学と哲学を修めるべく、文学部哲学専修課程に進学しました。卒論ではプラトンの『ゴルギアス』篇における「人間理解」というテーマに取り組みました。しかし、それまで親しんで生きてきた日本の伝統的な文学・宗教に蓄積されたわたしたちの考え方感じ方と西欧の知的文化がどう整合するのかが常に問い返され、また、キリスト教抜きで西欧文化を本当に理解できるのかという問いを内から持ち続けることで別の大学院に進学し、ソクラテスプラトン研究を進めつつも、徐々に、古代後期ギリシアローマでのキリスト教哲学思想の展開に研究の中心をシフトさせました。とりわけ、「キリスト教教父」「西欧の教師」とされるようになるアウグスティヌス(354-430)が、自らの素地のヘレニズム哲学思想と聖書に基づくキリスト教思想を一体のものとして思索していく姿に惹かれていきました。そういうわけで、ギリシア哲学やヘレニズム・ローマ倫理学と初期キリスト教思想という源流思想の両方を専門にしていますが、とりわけ、彼が直面していた古代末期の現状としての「貧困」「病」「老齢」などに対して、これらを彼独自の哲学(知恵を愛すること)の立場から、自分と人類の中心課題としての「心」のあり方を思索していた道筋を明らかにすることが今の私の研究課題です。

教育者としての私

学生の皆さんには、じっくりと古典を学ぶ健やかさを身に着けてもらいたいです。

古典を読むのには、具体的には、手間暇かけて辞書や文法書を引き、内外の関連文献を調べ、また改めでテクストをじっくり読んで意味をくみ取ることを繰り返していくことが求められます。これを基に自分で考えたこと・テクストを解釈したことを自分の言葉で表現し、友人や研究者との真摯なディスカッションを通じて、その自分の意見を人にも納得してもらえるところまで論理的に明確に仕上げてくことへと鍛えられたあり方が目標です。そんな作業が研究です。文学部ではそのような研究に親しんでもらいたいです。そのための入門手ほどきや応援を私は共に学ぶものとして厭いません。皆さんが初めて学ぶ古典ギリシア語やラテン語を丁寧に教えます。西洋思想の源流から展開についても教養の授業をします。倫理学という学問の骨格について概説を通じて幅広く知ってもらいながら、皆さんが自ら「倫理学するdoingEthics」ことを促します。講義を聞いて「ああそうだったのか」と分かってもらえるような真実を示すように努めます。しかし結局は、皆さんが自分でしっかり研究するようにしてください。実践演習では一人ひとりその姿を示してください。翻訳を用いることを手始めに研究の態度を身につけてください。無理することはありませんが、ちょっと苦しくても自らよく調べてよく考えて得られた成果には晴れやかな喜びがあります。その喜びを味わえるようになってもらいたいです。

私が書いたもの

「自己・肉体・わたしのあること—アウグスティヌス論をめぐって—」『内在と超越の閾』(2015年、知泉書館)、「Shaping the Poor: The Philosophical Anthropology of Augustine in the Context of the Era of Crisis」in『Christians Shaping Identity from the Roman Empire to Byzantium』 (2015年 、Brill, Leiden/Boston)、「Reception of Augustine」in 『The Wiley Blackwell Companion to Patristics』(2015年、Wiley Blackwell, Oxford)、「アウグスティヌスにおける信仰と知—フィロソフィアの原義に立ち返って—」『中世における信仰と知』(2013年、知泉書館)、「The Concept of Heart in Augustine of Hippo: Its Emergence and Development」in『Studia Patristica』LXX (2013 年、Peeters, Leuven)、『アウグスティヌスの「心」の哲学:序説』(2011年、岡山大学文学部)、P・ブラウン『アウグスティヌス伝』上下(2004年、教文館)、「ギリシア哲学の人間観」『人間学―その歴史と射程』(1995年、創文社)、「アウグスティヌスの倫理思想」『アウグスティヌスを学ぶ人のために』(1993年、世界思想社)、「『ゴルギアス』篇における価値の構造についての一考察」『倫理学年報』36(1987年、慶應通信)。

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