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竹島 あゆみ(たけしま・あゆみ)

教育分野(領域)

哲学・倫理学分野(哲学)

研究・教育のキーワード

哲学、近代、社会、政治、市民社会、国家、共同、自由、承認、和解、 ドイツ、ヨーロッパ

研究者としての私

私の専門領域は哲学です。特に、近代ドイツの哲学者であるG.W.F.ヘーゲル(1770-1831)という人の哲学を、社会哲学という観点から研究しています。

もともと私は、学部では経済学を専攻していました。というのはこどもの頃から、今自分が生きている場所であり、自分がその一部でもある「社会」というものが、一体どういうものなのかを知りたかったからです。高校生になって進路を考えるにあたり、経済的なものが社会の基礎を作っている(と当時は思っていた)ので、経済学を学べば社会がわかるだろうと経済学部に入学しました。しかしそこは私の考えるような研究をする場所ではありませんでした。経済学の考える社会の中には「合理的経済人」はいても「人間」はいなかったのです。

その後、「人間のいる社会」を研究するための様々な試行錯誤を経て(長いので省略)、今を生きている私たち自身と現代の社会との両方について、その基本的な部分は「近代」という時代に形作られたのであり、その秘密を解く鍵の一つは「近代の哲学」にあるのではないか、と考えるようになりました。それで(この間も色々あったが省略)、近代哲学の完成者と言われるヘーゲルの哲学に取り組むこととなりました。現在も、ヘーゲルが自己と他者の関係、自由と共同の関係、個人と社会の関係をどのように考えていたのかを中心に研究しています。

今取り組んでいるのは、「承認」と「和解」という二つの概念がどのように関連し、対立しているのかを解明するという問題です。簡単に言うと「承認」は「他人を自分と同じものであるとして互いに認めあう」ことであり、「和解」は「他人が自分とまったくちがうものであるからこそゆるす」ことです。この二つはとても近いようで、また同時にはるかに隔たっています。しかしヘーゲルは、私たちの社会はこの二つを両方とも必要としていると考えていたようです。

ヘーゲルの生きた時代は、宗教改革・科学革命・産業革命・市民革命といった近代の革命が大きく社会を変えていった時代でした。しかしそれは同時に様々な対立・反動・紛争・戦争の時代でもありました。ヘーゲルの哲学はそのような時代状況との関連抜きでは理解できません。

それから200年がたちました。しかし今なお、私たちの社会は様々な対立や争いに満ちています。そうであるからこそ、ヘーゲルの思索をリアルなものとして受け止めていく必要もまたあると私は考えています。

教育者としての私

教育の面では、とにかくまずは学生の皆さんには哲学の面白さを伝えたいと考えています。ですので、1年生向けの授業では、正確さ・厳密さを多少犠牲にしても、「哲学はこんなに面白いんだ」と思ってもらえることを重視しています。学年が上がるに従って、むしろ「正確さ、厳密さ」に注意することで、ますます哲学の面白さがわかるようになるということも、少しずつ伝えていくようにしています。

日常生活の中でふと抱く疑問、「私の見ている〈青〉と、隣にいる友だちの見ている〈青〉は同じ色なのだろうか?」とか、「なぜ人を殺してはいけないのか?」とかいった疑問は、実は哲学の世界では重要なトピックとなっています。このような疑問を、まず自分でたくさん数えあげていくことは、哲学の大切な出発点です。しかしそこから始めて実際に疑問の答えを見つけるには、何段階かのステップがあります。

この問題の概略を知るためにはどういう本を読めばいいのか、哲学史の中ではこの問題はどう扱われてきたか、この問題を論じている古典的な、また最先端の文献は、どうやって探せばいいのか、それらの文献を正確に読解するにはどうすればいいのか、読解した結果を報告するにはどのように書けばいいのか、自分の考える「答え」を説得力をもって主張するにはどうすればいいか…等々。哲学の授業の中では、初発のオリジナルな疑問を大切にしながら、このような事柄について具体的に指導していきます。

私が書いたもの

論文「承認と和解——ヘーゲル社会哲学の二つの原理」(『近世哲学研究』第17号、2013年、http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/189773京都大学学術リポジトリ)は、前ページの「研究者としての私」で述べた、ヘーゲル社会哲学における「承認」と「和解」について論じた論文です。この論文ではヘーゲルの最初の主著『精神の現象学』(1807年)に範囲を絞って、「ヘーゲルの承認モデル」・「キリスト教の和解の教義」・「ヘーゲルの和解概念」などについて考察しています。上のURLから無料でダウンロードできますので、ぜひ読んでみてください。

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