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中谷 ひとみ(なかたに・ひとみ)

教育分野(領域)

欧米言語文化論(英語圏文学)

出身大学/大学院

富山大学文理学部/筑波大学大学院博士課程文芸言語研究科

おもな所属学会

日本英文学会、日本アメリカ文学会

研究・教育のキーワード

現代アメリカ文学、特にメタフィクションが主たる研究・教育分野ですが、アメリカ、文学、教育、宗教について幅広く関心を持ち、研究しています。

研究者としての私

大学卒後、郷里の石川県の能登で5年間高校の英語教師をしました。いわゆる「問題校」で、授業ができないクラスもあり―生徒が邪魔をして授業をさせてくれない―命の危険にもさらされました。今なら、「問題教師」でしょう。このまま人生を終わらせたくないと強く思い、かといって再就職のあてもなく危険な冒険でしたが、教員をやめて大学院で勉強し直しました。人生は一度しかない、自分の命が他人の手に握られているなんて不条理だ、高校生でも子供でも他人の命を奪ったり脅かしたりすることは絶対に許されない、と思いました。それでも、したい放題で、「箸にも棒にもかからない」高校生はいるのです。どう扱ってよいのか、どんな言葉が彼らの心に響くのか、わかりませんでした。教員をしたのは5年ですが、様々な高校生を見てきましたので、実質的には30年分ほどの経験です。今は、教員志望の学生さんに教育現場のこと、教育困難校でどうすべきかなど、機会があればお話しできるかと思います。

アメリカ現代文学を選んだのは、当時世界文学のなかでアメリカ現代小説が最も面白いと言われていたから、大学時代から興味があったから、現代文学は先行研究が比較的少なく自由に持論を展開できるから等の理由からです。筑波大学を選んだのは、当時現代アメリカ文学を研究している第一人者が、筑波大学と東京外国語大学にいらっしゃったからで、大都会とヘビースモーカーの先生を避け、筑波大学にしました。今から思うと、正しい選択だったと思っています。自分は田舎者ですから、空気もきれいで環境の良いつくば市でゆったり勉強・生活ができました。「置かれた場所で咲きなさい」という人がいます。置かれた場所で根を張って生きてみると、思った以上の実をつけることができるかもしれないという例だったかもしれません。今は、現代文学研究者はどこにも、そして大勢います。その中で、いかに良い論文を書くかの競争ですが、後悔していません。「この小説、こんな読み方ができたんですね、目から鱗でした」などと褒めてもらえることが、何よりうれしいです。自分でも単純な人間だと思います。

大学院では、現代アメリカ文学を学ぶ先輩・後輩とともに様々なアメリカ現代作家の小説を読みました。自分が最も斬新な実験小説家の一人と考えるJohn Hawkesの小説世界を修士論文で扱ってからは、Pynchon, Barth, Barthelme, Gass, Morrisonなどメタフィクションをキーワードに研究してきました。現代文学ですので、現在も生きて作家活動を続けている作家たちが多いのですが、今はPaul AusterとDon DeLilloを中心に研究しています。そろそろ彼らの文学の全体像が見えてきたので、作家論を構想中です。それをまとめて定年退職したいと思っています。

「文学をやる者にとっては24時間が勉強だぞ」というのが、就職が決まって大学院を去る時の、指導教授の最後の言葉でした。文学研究には人間や社会、世界状況や歴史など様々なことを浅く、広く知っておく必要があります。量子理論、精神分析、経済、社会学などの理論などの本も濫読します。論文の発想に役立つことがあるからです。皆さんも常日頃からいろんな本を読んで、視野を広めつつ、自分が本当に勉強したいことに挑戦してください。

教育者としての私

高校教員のとき、教員の影響力というより、生徒自身が交流・研鑽しあうことで成長していくことが分かりました。今は時代が違うかもしれませんが、自分の授業では、学生同士が互いの美点やユニークな発想法や知識の豊富さなどが発見でき、互いに刺激になるような機会を作るよう努力しています。授業は、基本的には、受講者の自主性を重んじ、また期待します。文学を読むのも研究するのもなんの役に立たない(特に就職という点で)というのは大きな間違いだと思います。大学教育は文系、理系に限らず、論理的な思考力を身につける、自分の考えを自分の言葉で表現する、グループの中でプレゼンテーション/議論してより良い・適切な考えに到達するような知的な訓練をすることだと思っています。この3点は就職活動にも、就職してからも役に立ちます。その意味では毎日が就職活動ゆえ、「じたばたせずに、毎日の勉強と友人たちとの交流など、今・ここの一瞬一瞬を大切にせよ」と、自分の指導学生には言っています。

私が書いたもの

John Hawkes, Toni Morrisonについての単著の研究書があります。また『現代アメリカ文学と仏教―西洋と東洋、宗教と文学を越境する』(岡山大学文学部叢書No.28,2009、全283頁)を書きました。最近の論文はPaul Auster, Don DeLilloの小説論がほとんどですが、文学部と大学院の紀要で読めます。

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