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講演会「見えない世界をみる」、ワークショップ「作品に触れてください!」を開催しました。

2015年4月15日(水)12:00~13:00に、岡山大学文学部会議室において、岡山大学生・大学院生・教職員・一般市民を対象として、次の講演会を開催し、90名を超える方々に参加いただきました。

題目
見えない世界をみる――「障害」から生まれる新たな身体知

講師
広瀬浩二郎(国立民族学博物館民族文化研究部准教授)

司会
岡本源太(文学部准教授)

講師の広瀬浩二郎さんは、琵琶法師や瞽女の歴史を専門として研究すると同時に、13歳の時に失明されたご自身の体験をもとに、視覚に頼らない知的探求の手法として「触文化」の可能性を追求・提唱されている方です。主著に、『障害者の宗教民俗学』(明石書店、1997年)、『世界をさわる 新たな身体知の探究』(文理閣、2014年)、『知のバリアフリー』(京都大学学術出版会、2014年)、『身体でみる異文化』(臨川書店、2015年)などがあります。

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講演会の前半では、ご自身の3冊の近著のそれぞれの表紙で、タイトルを点字にする、視覚イメージを触覚で置き換える、視覚より触覚を重視した表紙をつくる、という工夫を行ったが、これらの試みを通して、マイノリティーが自己主張する際の3段階――こそっと、ちょこっと、ガラッと――を表現することを目指した、とお話しいただきました。

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続いて後半では、琵琶法師による平家物語の語りのCDをお聞かせいただいた後、現代では間延びしたようにも聞こえるゆっくりとした節回しだからこそ、聞き手は想像力を働かせて能動的に語りを味わうことができる、また中世では、音だけで豊かなイメージを喚起することができる盲人の能力に対して、現代以上に敬意が払われていたとお話しいただきました。
講演後、本学部の岡本源太准教授(美学)の司会のもと、活発な質疑応答も行われました。アンケートでも大変好評で、「もっと長く話を聞いていたかった」というコメントも多くお寄せいただきました。

その後、岡山県立美術館に場所を移し、15:00~17:00に、美術館で開催中の『目の目 手の目 心の目 体感の向こうに広がる世界』展と連動した次のワークショップを開催し、文学部生を中心とした35名を超える参加者を得ました。

題目
作品に触れてください!――さわる展示からみえる美術

講師
広瀬浩二郎(国立民族学博物館)

司会
岡本源太(文学部准教授)

ワークショップでは、まず広瀬さんに「触る」美術鑑賞において心得るべき、「ユニバーサル・ミュージアムの六原則」をお話しいただき、続いて美術館の福冨幸学芸員に、本展覧会の趣旨と狙いについて語っていただきました。
その後、参加者は、広瀬さん、福冨学芸員、さらに岡本祐子学芸員のお話も伺いながら、思い思いに作品鑑賞を楽しみました。中には、アイマスクをつけ、まったく視覚に頼らない鑑賞に挑戦した参加者も見られました。

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その後、講演会と同じく岡本准教授の司会のもと、参加者たちはそれぞれの「触る」鑑賞体験について、活発な話し合いを行いました。「作品を触るだけで想像した色と、その後作品を見て知った色が大きく異なっていることに驚いた」といった興味深い感想も寄せられました。